この度、生殖バイオロジー東京シンポジウムの組織が改変され、従来の世話人制から理事会制に改められました。言うまでもなく、本研究会は故東條龍太郎先生が発起人となって鈴木秋悦先生の教えを実践するために創設されました。会の発足以来、鈴木先生が会長としてすべてのプログラムの立案、そして講演者の選定を行ってこられました。そのため、演題のクオリティが高く本会には熱烈な多くのファンが存在します。東條龍太郎先生、そして鈴木秋悦先生と相次いで偉大な指導者を失ったことは痛恨の極みでありました。しかし、弟子として「秋悦イズム」の本拠地である本会を消滅させるわけにはいかず、今後も継続させる決意をし、組織改変を行わせて頂きました。
さて、では「秋悦イズム」とはどういう考え方でしょうか。秋悦先生は常日頃から「自分の源は北海道の鮭の産卵にある」と仰っておられました。そういう若い頃のピュアな体験が臨床医でありながら基礎生物学を愛された原点であったと思われます。そこで、本会の根本として「基礎医学に裏付けられた臨床医学を追求する」ことが鈴木先生のご遺志を継ぐことになると考えております。今後も引き続きこの基本にのっとって、良質な基礎医学と臨床医学の両方の情報をご提供するように努めて参りたいと存じます。また、秋悦先生は、学会での上下関係や、学閥など一切関係なく、別け隔てなく私達を指導されました。社会的制約に囚われることのない自由闊達な意見交換の場にすることがもう一つの本会の特徴だと思います。
私は東條先生のご指導を得ながら鈴木先生を補佐する副代表を努めさせて頂いておりましたが、この度理事長の任をお引き受けすることになりました。何分浅学非才の身でもあり偉大な秋悦先生の跡を継ぎ、十分な任務の遂行ができるかは不安な部分もあります。しかしながら、新たに副理事長として選任された菅原延夫先生、古井憲司先生、そして理事の先生方とともに、秋悦先生の遺された大きな遺産を全力でお守りしたいと思いますので、会員の皆様におかれましては、ご指導とご支援をお願い申し上げます。
2022年6月27日
生殖バイオロジー東京シンポジウム理事長 森本 義晴